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首里散歩 Vol.160 記憶と嗅覚 2022年11月1日

早いもので、もう11月!
今年も秋の訪れを感じつつも、強い太陽や蒸し暑さも残っていることにホッとしながら、急に寒くなったという首都圏の話を、異国のことのように感じています。

台風の、湿った空気と雨が、数日続いていますが、やらなければいけないことに、なかなかやる気が起きないこんな時は、よく、携帯に入っている写真や動画を眺めています。

風と雨の音を確認しながら、携帯のアルバムを見ていると、自動的に「マジックアワー」とタイトルされた夕刻の写真が次々と切り替わっていきました。「マジックアワー」というのは、日本語では「薄明(はくめい)」と言い、​​​​​​​​日の入り後などの、太陽は出ていないのに辺りがぼんやりと明るい、空が美しい時間帯のことを言います。

私は、その淡い色合いの景色を目にした時に、いつも感じる匂いがあって、写真を見ながら、その、透き通るような、でも確実に自然を感じる匂いに、しばらく浸りました。

このような、「特定の景色に、特定の香り」を感じたり、「ある音を聞くと、ある色が浮かぶ」など、1つの感覚刺激から、無意識に別の感覚が連動して現れることを『共感覚』というそうです。生後3ヶ月くらいまでは誰しも持っている感覚ですが、ほとんどの場合は大人になる前にその感覚が失われる人が多いと言います。

この、なかなかわかってもらえない、私だけの「マジックアワーの匂い」を感じながら、次々と沖縄の淡い色彩の世界を思い浮かべていくと、先日久しぶりに訪れた、透き通った水や惑星のような凹凸が美しい、鍾乳洞の景色が思い出されました。

この景色を見た時にも、やはり、少し白濁したような淡い匂いがあり、家にいながら、しばし深い臨場感を楽しむことができました。

記憶と嗅覚に誘われて、景色を見ていないのに、私の心に、長い年月をかけて生み出された鍾乳石が美しく浮かんだ、マジックアワーとなりました。

ライター
首里石鹸 白鳥恵子

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