今年のゴールデンウィークに、ピカソに憧れた日本の芸人さんであり芸術家の個展に、何度も足を運んだ。
初期の時代からの作品を愉しむごとに、五感が刺激されて、まるで、頭の中を描いているうちに、どんどん空想が広がって止まらなくなったような表現や、何を描いても温かいタッチに心が救われて、懐かしい、幼少の頃を思い出した。
5歳上の姉が、いつも私と妹に、庭の霜柱の妖精からの手紙(つゆ草の汁で書いたという)を渡してきたり、魔法のおとぎ話ごっこを持ちかけては、得意の工作を駆使して、不思議な世界を作っていた。
今でも覚えている。「え…?」と驚いて、姉の話す世界の中に入り込んだ時の空気を。いつしか、そんな幼少期のことは笑い話になってしまったけれど。
結婚してから、主人の母が、諏訪の山で、姉を超えるような空想の世界を愉しむ幼少期を過ごしたことを知り、話をしていると、どんどんその世界に引き込まれていき、ご縁とは不思議なものだなぁと驚いた。
そして、その義母(はは)とちょうど60歳差で、同じ虎年の息子が誕生し、成長するにつれ、義母が没頭してきた分野だけでなく、その空想力も遺伝していることを、日々感じるようになった。
そんな息子が、「学校で夢みたいな話ばかりしてくる人がいて、嘘だってすぐわかる」なんて言うのを聞いて、無性に寂しくなっていた矢先に訪れた個展だった。
鑑賞している絵画や粘土作品などから、心の豊かさと優しさが楽しみながらこちらに行進してくるような表現に、親子ですっかり魅了されて、
「俺、わかるんだよ、ほら、ここに虫が隠れてるよ」
などと、自分のことのように話す様子には、今までの空想好きの煌(きら)めきが復活していた。
私も幼い頃に感じた、あの空気と同じ、まさに懐かしいキラキラだった。
それから何度も、展示を見に行き、空想の先には、夢やまだ見ぬ新しい未来があることを感じて、微笑み合った。
そろそろ、また夕方のビーチに出かけて、刻々と変わっていく空を見ながら、物語を作って語り合う遊びでもしに行こう。
ライター
首里石鹸 白鳥恵子