私の故郷は雨があまり降らない。
だから香川を離れるまで、私は自分が晴れ女だと思っていた。
香川を出てすぐの頃「私がおでかけするのに雨が降るなんて!」とお嬢様のように苛立った自分が恥ずかしくも懐かしい。
今は自分が何女でもないことを認めてあらゆる天気を受け入れて生きているが、先日帰省した際、私はまたひとつ勘違いをしていることに気がついた。
あろうことか、自分が寒さに強い人間だと思っていたのである。なんという勘違い。沖縄移住前は冬になると突然付き合いが悪くなる人間だったくせに。
勘違いに気付いたのは年末。
久しぶりに寒い土地に行くぞ!とすこし楽しみに香川に帰省したら、あまりの寒さに「え?!寒いってこういうことだったの?!」と恐れおののいたのである。まじで顔が凍るかと思った。
たたみかけるようにタクシーの運転手さんをはじめ、会う人みんなが「今日は寒くない方だよ」と言う。
これで?と思う。
到着して10分で「冬に沖縄から出るんじゃなかった」と後悔する自分がいた。
寒い日々を数日間耐え、やっと暖かいまちに帰れる!と飛行機に乗り込んだが、那覇空港に着いたら着いたでなぜだかすこし寂しかった。
あーあ、もうすこし寒さを感じていたかったなぁと、突然余裕めいた気持ちが芽生えたのである。実は毎回こうだ。
私にとってはもう、香川の寒さも沖縄の生暖かさも、”今いない方の場所”を懐かしむ存在なのかもしれない。
そんな風に思いながら家に帰ったが、翌日の朝はすんなり起きることができて、やっぱり寒くない方がいいなと思った。
私が沖縄に住み続ける理由のひとつに「冬のいちばん寒い日も起きられなくはない」があったことを忘れてた。
やっぱり私は根っから寒さに弱い人間である。
ライター
三好優実