わたしが小学生だったころは、土日でも学校の校庭は解放されていた。
朝ごはんを食べ終わると、迎えに来た友人と共に日差しの照り付ける中飛び出し、競うように校庭に向かっては、石の滑り台を滑ったり、大きなガジュマルに登って少年野球を眺めたり、人数が多い時には缶けりなんかもしていた。
そんなある日のこと、2学年上のお兄さんお姉さんたちが、「俺たち、この間首里城公園まで行って遊んだんだぜ!」と、話していたのを耳にした。
子どもだけで首里城まで遊びに行くなんてスゴイ!と友人と盛り上がり、「じゃあ、明日私たちも行ってみようよ!」と、約束を交わした。
次の日、母に作ってもらったおにぎりをナップザックに入れ、友人と意気揚々と出発した。
着くまでは楽しかったのだが、着くと遊具もない、登れる木もない公園に、2人でやることは早々になくなり、なんとなく2人とも残念な気持ちになっていた。
「何もないね…どうする?」
「そうだね…いつもの校庭にいまから行く?」
そんな事を話しながら瑞泉通りを歩いていると、なんだかかぎなれた香りがした。
「あれ?このにおいって、学校の近くでもするよね?」と話す。馴染みのある香りに励まされ、「やっぱり探検しよ!」とワクワクする気持ちのまま走り出した。
結局、その途中で庭のカーブチー(沖縄在来種のミカン。皮が厚いことから“カー(皮)ブチー(分厚い)”と呼ばれている。)を取っているおばぁを手伝い、小さなカーブチーをお土産にいただいたことで、プチ探索の事もすっかり忘れて家路についたのだが(笑)、大人になった今も、首里城近くを通る時には、あの日のことを思い出して窓を開けてしまう。
遠くからかすかにきこえてくる子どもたちの声と、街に馴染む酒かすの香り。
あの楽しかった日の記憶と懐かしい気持ちを思い出させてくれる香りを胸いっぱいに吸い込みながら、帰路につくのはなんだかとてもいい気分だ。
首里石鹸 中里ゆきこ