激しい雨が続いた梅雨がやっと明けた。
ちょうど一番日の長い今の時期、眩しすぎる夕陽に照らされながら、日没後の散策の注意点に耳を傾ける。
春から、息子の恩師でもある先生が主催している団体で、月に数回ロープ結びや風呂敷包み、ボードゲームなどに参加するようになった。
野外活動もあり、大人と子どもが一緒になって、普段の生活ではなかなか機会が得られなくなった作業に向き合うと、思いもよらない気づきがあって、新鮮な楽しみとなっている。
この日は、何十年も行ってきたという、ホタル観察に訪れた。那覇の末吉公園には、点滅するクロイワボタル、線を描くように移動するオキナワスジボタルの2種類のホタルがいて、日没後、暗くなってしばらくしてから光り出すという。
オスが最初に淡く光り準備を整え、メスが現れる頃に強く光り飛び廻ることで、メスがオスを見つけて光で会話し、相性の合う相手とペアになる。
ホタルは光にとても弱いそうで、強い光を受けると、自ら光ることができなくなってしまい、とても短い繁殖のタイミングを逃してしまうことを初めて知った。
月の光でも影響を受けるほどだという。
那覇の栄えた街並みに、緑の山の一体となっているこの公園が、ホタルの命を繋いでくれているのかと、ゆっくりと見渡した。
日没後、街灯のない園内に進んでいくと、木々にシダ植物が絡み合う神話のような景色が、暗闇の奥深くに広がっていた。
ゴツゴツした大きな石の間を流れる安謝川のせせらぎを耳にしながら滝見橋を渡り、自分もその暗闇と調和したような気持ちになった時に、うっすらと光が見え始め、次々と揺らぎ始めた。
帰る頃には、樹木の根から幹にかけて、その下の草にもホタルの光が広がった。一つ一つ強さも、光り方も、動きも違う光。いつもなら、その幻想的な様子を、すぐに携帯で撮影するところだが、説明の時に電源を切った携帯を触ることなく、心に光を灯す気持ちで、ホタル同士の挨拶に加わるように楽しんだ。
汗びっしょりになりながら駐車場まで戻ると、その手前で、久しぶりに現れた街灯の光で、目が眩みそうになった。
まるでタイムマシンで別の時代に降り立ったような異空間に感じて、明るい世界が少し寂しく感じた。
その感覚をそれぞれの心の奥にしまい、来年再来年と、また親子三代でホタル観察に参加したいと思う。
ライター
首里石鹸 白鳥恵子