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首里の香り Vol.26 1年に1度、咲く。

昨年5月の良く晴れた日のこと。
「1年に1度のなごらんの開花がはじまったそうなので見に行きませんか?」

初めて聞く花の名と「1年に1度」というフレーズに惹かれ、なごらんの保全活動を行っている北部農林高校へ伺うことに。

沖縄にずっと住んでいながらも、初めてお目にかかる希少な花『なごらん』。どんな色でどんな香りがするんだろう。思いを巡らせながら車を走らせていると、名護に入った途端、青々と広がる海に目を奪われる。北部の美しい自然を前にさらに期待で胸が高鳴る。

学校につき、迎えてくれた生徒さんたちは、少し恥ずかし気。ご挨拶後、なごらん保全活動の取り組みの一部を見せていただくため校内へ足を運ぶ。久しぶりの「学校」に懐かしい気持ちになった。

自然に自生することが難しいなごらんは、生徒さんたちの手でお世話をされ、まだ小さい株は管理の行き届いたフラスコの中で大事に守られている。

そして、ある程度大きく育った株はハウスに移り、湿度や気温を確認しながら日光や空気に触れさせて、少しずつ外の環境に慣らしているのだそう。1株1株丁寧に時間をかけて、成長具合を見ながら適切な管理をされているのだと教えていただいた。

ハウスへの移動中、年相応の明るくおどけた一面も見せてくれた生徒さんたちは、ひとたびなごらんを前にすると真剣な表情に変わる。

落とさないようにしっかり持ち、折らないように優しく触れる。
心のこもったその仕草から、大切にされているお花であることを改めて感じた。

花が咲いているのでこちらが最終的な大きさだろうか。予想よりも小さめだなと思いつつ、しゃがんでお花を眺めていると「たくさん咲いた場所があるのでご案内しますよ。」と先生に声を掛けられついていく。

そこには、なごらんが固定された木々が立ち並び、四方をなごらんに囲まれる。あんなに小さかった株が愛情を受けてたくましく育ち、幹にがっしり根を張り誇らしげにいくつもの花を咲かせていた。

すぐ近くの花を見上げた時、ふわりと甘く爽やかな香りが風に運ばれ鼻をかすめる。
「いい香り。」思わずつぶやくと、誇らしげにほほ笑む生徒の一人と目が合った。照れくさそうにそらされてしまったけれど、夢中になってなごらんの香りを楽しんだ。

・・・

「なごらんって知ってる?」
そう誰かに伝えたくなるほど魅力的な姿と香りは、1年に1度だけでなく何度も。会話に花を咲かせることだろう。

首里石鹸 田中りほ

北部農林高等学校の生徒さんが、なごらんの受粉をお世話している様子。

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