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首里散歩 VOl.302 あの日の国頭村 



このたびの沖縄本島北部の豪雨により被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
皆さまの安全と、一日も早い復旧をお祈りしております。






竜宮城?ふと視界に入った景色に、そんな言葉が浮かんだ。

まだ暑さが残る10月の下旬だったが、沖縄らしい海や空とは少し違う、早朝の霧がかった様子に、狐につままれたような気持ちになる。

その後、ナビ任せで何とかたどり着いたのは、一転して、爽やかな山景色だった。

「え?比地大滝、初めてなの?」と少し驚かれて、「みんなが行ったことがあるような場所なのか」と、相変わらず不慣れなトレッキングを、ホッとしたような身が引き締まるような気持ちでスタートした。

前日の大雨の影響で、最初の川縁の道は水溜りだった。
スニーカーに水がじんわり染みてきた頃に、比地川砂防ダムが目の前に現れた。

昭和60年に建設された後、平成10年に、リュウキュウアユなどが川を行き来する「魚道」などを設置し、岩のような仕上げに改良したという景観から隆々と水が流れていた。

この日も、天候の変化で、危険に晒される感覚をしっかりと受け止めながら、歩みを進めて行ったのだ。

8月よりは暑さも和らいでいたが、とにかく急な階段が続く場所が多く、息子を含めた一行からは距離ができてしまい、今回はほとんど一人での歩みとなった。

整備された階段や吊り橋がところどころ脆くなっていたりするのを注意深く確認しながら、近くを流れる水流の音を聴きながら、進んでいく。

それからどれぐらい頑張っただろう。

生い茂った木々の奥から、息子たちがこちらに手を振っているのが見えて、最後の階段を登ると、これまでの水流とは比べ物にならない大滝が現れた。

岩をつたいながら滝に一番近いエリアに辿り着くと、マイナスイオンが広がり、カチッと自分の中でスイッチが入るのを感じた。

帰り道はとてつもなく長く感じたが、行きに遅れながらもやり遂げた感覚が後押しして、帰りは歩みを緩めて付き合ってくれた息子になんとかついて行けた。

どこまでも続いていたトレッキングから解き放たれた開放感は格別だった。

山が海の近くにあるのが、沖縄の魅力。

帰りに、近くの食堂で食べた海鮮盛り合わせの豊かな味わい、庭先の海辺のブランコの心地よさも、全てが少し儚く感じて、あの日にしかないご褒美のように感じた。

また新しいスイッチを探しに、国頭村に行きたい。

ライター
首里石鹸 白鳥恵子