実家を離れて1年が経った。
この1年で明らかに変わったのは、食事だ。
元々、不器用で料理が大の苦手な私は、引っ越したばかりの慣れない環境の中で、外食やインスタント食品に頼ることが多くなっていた。
そんな生活が続いて数ヶ月後、久々に友人と会うことにした。
「友人」と言っても、年上のその人は、私よりも私のことを知っているのではないかと思うくらい的確にアドバイスをくれる、頼れるお姉さんのような存在だ。
「そろそろ落ち着いた? ご飯ちゃんと食べてる?」
「落ち着きましたよ〜! ご飯はインスタントばっかりですけど…。」
バチッ、と目が合い、空気が変わった。
「大丈夫な人もいるやろうけど、あんたはそれはあかんのちゃう?」
え? 何が?…私の顔を見て疑問を感じ取ったのか、彼女が続ける。
「私とご飯行ったとき、よく頼むものを思い出してみて。サラダ、お造り、きゅうりの浅漬け、煮卵、チーズ…あと調味料はポン酢とかワサビを選んでるイメージがあるね。あんたの好きな食べ物、ひとつひとつ見ると共通点なさそうだけど、どれも素材の味がしっかり活きてるものが多いねん。」
そう言われ、思わず他の好きな食べ物を次々に挙げていく。
「そば、納豆、キムチ、漬物、味噌汁、茶碗蒸し…」
発酵食品や出汁が重要な料理が多いことに気付く。
「何食べても元気!って人ももちろんいるけど、あんたの力になるのは、そういう食べ物なんじゃない?」
そんな考え方をしたことがなかった私は、ただ呆気にとられたのだった。
でも、不思議とすごく腑に落ちた。
数日後、沖縄料理屋へ足を運んだ。
旅行から3ヶ月が経ち、久々に沖縄の気分を楽しんで味わう。
そこでふと気付く。
沖縄料理って、素材の味を活かしたものがとても多いと気付く。
あおさや海ぶどうなど海藻を使った料理も多いし、
たくさんの具材が入っているのに、それぞれの味が引き立つチャンプルー。
そして、再び食べるのを楽しみにしていたもずくの天ぷら。
そうか、だからあの炎天下の中で動き続けても、旅行中ずっと元気だったんだ。
もちろん、楽しくて高揚していたのもあるけれど。
「きっと私の力になってくれる」と考えながら料理を口に運んだのだった。
…
今では、惣菜や冷凍食品に頼る日でも冷奴やキムチを合わせたり、外食ではなるべく和食を選ぶようにしている。「沖縄産もずく」と書かれたパックは、今やお守りのような存在だ。お菓子も、野菜やナッツを使ったものを選ぶようになった。
「食べることは生きること」という、どこかで聞いた言葉を実感する日々。
今日も元気の源を、いただきます。
首里石鹸 星見せいか