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首里散歩 Vol.370 不器用な私のカンカラ三線

「作ったのか?!ずいぶん器用だなぁ!」

沖縄旅で作った『カンカラ三線』を、今年95歳を迎えた父に見せたときのこと。
多少のことでは驚かない父が、こんなにも嬉しそうに反応してくれた。

『カンカラ』とは、空き缶のこと。
もともとは戦後、物資が乏しいなかで、空き缶や廃材を使って作られたのが、『カンカラ三線』なのだそう。

今回はキットを使ったので、実は誰でも簡単に作れる。
作り方はこうだ。

まず、軸になる棒の木の角をヤスリで丸くして、穴のあいた丸い缶に通す。

そこに、弦になる3本の糸をかける「カラクイ」という部分を取りつける。


最後に弦を引っ張りながら巻いてチューニングすれば、完成。
所要時間は、およそ30分。

そして、作ったあとは演奏体験!
「最初は《チューリップ》を弾いてみましょう」と先生が楽譜を渡してくれた。

見てみると、ドレミではない音階が。
ドは「四」、レは「上」、ミは「中」…。
その読み方を覚えるところからスタート。すでに、わたしの頭の中は怪しい雲行き。

左手は、弦を離した状態が0。そこから内側に向かって1〜5の場所を押さえていく。
右手は「ツメ」と呼ばれるバチで、3本の弦を弾く。

頭で考えて、手に伝えるという脳の作業がどうにもスムーズにいかず、だいぶ手こずった。
音楽として「奏でる」には程遠く、
ひとフレーズ終えるごとに飲み物を口にし、深呼吸という名のため息をつく。

弾く前までは、
「楽譜も読めるし、弦は三本だし、いけるでしょ」
などと思っていた自分を恥じた。

しまいには、チューリップすらまともに弾けないくせに、
「本当はもっと沖縄っぽいのが弾きたかったんですよね〜」
なんて愚痴をこぼす強者ぶりを発揮してしまった。

そんなわがままにも、三線の先生は優しく「何の曲を弾いてみたいですか?」と聞いてくれた。
すかさず「島唄!」と答えると、
「‥難しいところいきますねぇ」と苦笑い。

「やっぱり難しいですか…じゃあ、有名な沖縄っぽい曲で、いちばん簡単なのを弾きたいです!」
そう言って出してもらったのが、《涙そうそう》の楽譜。

「サビの部分だけ、やってみましょうか」

原曲とは思えぬスピードで、頼りなさげなバチの音を響かせながら、なんとか終了。
気合いと根性だけで乗り切った。

・ ・ ・

旅から戻ったあと、父のもとへ遊びに行った際に、練習していた《涙そうそう》のサビを披露してみた。

本州ではなかなかお目にかかれない三線を、珍しそうに触ってみる父。
そして、ギターのように抱えて、弦を上から下に――じゃらじゃらん♪

そうだよね。私もそんな感じで弾くと思っていたよ。
この“ギター持ちでじゃらじゃらん♪”は、沖縄県外あるあるかもしれない。

そしてついに、けっこう練習した《涙そうそう》のサビを聴いてもらう。

歌詞までつけて、思いっきり題名まで歌いながら弾いたにもかかわらず――

「‥‥何の曲だ?」

そんな父の反応に、そっと心を落ち着け、
私は「やっぱり三線は、弾くより聴く専門でいこう」と心に決めた。

(※念のため補足しておくと、普通の人なら1時間ほどの練習でちゃんと弾けるようになるそうです!)

敷居が高そうで、触れる機会なんてないと思っていた三線。
それを自分で作り、帰ってきてからも思い出の続きを楽しめる『カンカラ三線』。

今は部屋の、ちょっと素敵な飾りものになっています。

ライター
まちこ