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首里散歩 Vol.382 沖縄スピリッツ

お盆の時期になると思い出す、幼い頃の不思議な記憶。

3歳頃だっただろうか。
家族とお墓参りに行き、母たちは親族と掃除をしながらおしゃべりをしていた。

兄弟との遊びもひとしきり終え、少し退屈していたのだろう。
私は、木や草の茂ったまわりの景色をボーっと眺めていた。

すると、その奥からもくもくと白い煙が立ちのぼってきた。

(なんだろう?)

好奇心のままに近づくと、どんどん煙が私を包みこんでいく。
視界が悪くなり、やがて目の前が見える頃には――
あたり一面がタイル張りの床になっていた。

タライを置く音が、
(カコーン)と響く。

・ ・ ・

気づけば、目の前には大小の湯船が連なり、誰かの会話のようなざわめきが聞こえていた。
少し離れた湯船で気持ちよさそうに浸かるお爺さんが、私に手招きをしている。

けれど、人見知りの私は近づかなかった。

そのまま長い長いタイル張りの道を歩いていくと、突然、お婆さんが二人現れた。
驚いた顔をして、私にこう言った。

「アンタはまだ早い!!」

他にも何か言っていた気がするが、この言葉だけははっきり覚えている。

幼い私はただ怒られたと思い、慌てて道を駆けていくと、坂道の上から兄だろうか、誰かが私を呼んでいた。
気がつくと、またお墓参りの場所に戻っていた。

あれは夢だったのか。
それとも子ども特有の想像だったのか。

そんな記憶をずっと心の隅に住まわせながら、私は沖縄で暮らす機会を得た。

ムーチー、シーミー、ハーリーに大綱挽。
これまで聞いたこともなかった行事が一年を通してあり、「祭る」ことがとても多い土地なのだと知った。

海や山や川、植物などの自然。
火や井戸といった日々の営みの中にあるもの。
そこには「神様」や「精霊」、そしてご先祖様のいる「あの世」と呼ばれる世界が、祭り事を通してすぐそばに感じられた。

また、沖縄で出会った心揺さぶられる曲の中には、「幼い子どもの心は無垢で神に近い存在」という意味や、
「霊験あらたかに」と我が子の成長を願う親の祈りが込められていることを知った。

この島では、ごく自然に
『別の世界』
が寄り添っている。

そう感じずにはいられなかった。

――子どもの頃に体験したあの記憶。
もしかしたら、本当に「あちらの世界」を少し覗いたのかもしれない。

「いい湯だな〜ごくらく、極楽〜」
あながち、そうなのだろうか。

そして「この世」に生きていることの尊さ。
忘れぬように、忘れぬように――。

そう思わせてくれる、沖縄スピリッツ。

もうすぐ旧盆。
ご先祖様が、そろそろ身支度をしていらっしゃる頃かもしれない。

ライター
パッチンくるり

追伸:
沖縄では毎年旧暦でお盆を行うのですが、2025年は9月4日(木)~6日(土)になります。
初日をウンケー(御迎え)、真ん中を中日(なかび)、最終日をウークイ(御送り)と言います。
親戚一同が集まり、ご先祖様に感謝をお伝えする大切な行事のひとつなんです。