台風接近のニュースが流れると、スーパーから売り切れ続出の商品がある。

その商品とは?それは、インスタントラーメン。
お気に入りのラーメンが売り切れていた時の落ち込みはただものではない。
今でこそ当たり前のようにインスタント食品やお菓子に飲み物を台風時に備えることができるようになったが、私が小さな頃はそうはいかなかった。
あの頃は台風が来ると決まって「停電」。
そして我が家の台風の日のメニューは「ソーメンチャンプルー」に「ヒラヤーチー」が登場した。

母は、停電になる前に作り置きをしておいてくれたものだ。
そうしておくと停電になってしまっても、暗闇で料理することもないというわけだ。
我が家のソーメンチャンプルーの材料は、「ツナとニラ」。
ヒラヤーチーの材料は、小麦粉に「ツナとニラ」。
そう!この二品は材料が同じ。
当時、アイディアが詰まった非常時の手料理だったのである。
その台風定番メニューが、大人になると飲食店のメニューに顔を並べるとは思いもしなかった。
まさに、台風定番メニューが『台風グルメ』に様変わり。
この二品は冷めても美味しく食べることができたので、残りはおやつとなる。
懐中電灯ではなくロウソクの灯りのもと、おやつにヒラヤーチーを食べながら家族みんなでトランプ。
溶けたロウソクのロウを固まる前に魔女のような爪を器用に作る姉。
壁に指でつくる影絵遊び。

台風の日ならではのいろいろな楽しみがあったことを思い出す。
外は強い風雨が吹き荒れていても、家の中は笑いに包まれた。
時には、怪談話で盛り上がったこともあった。
怖さをヒラヤーチーを食べることで紛らわしたりして…。
このように美味しさを兼ね備えたソーメンチャンプルーとヒラヤーチーは、今でも台風の日になると食べたくなる思い出の詰まった台風グルメだ。

強風になびく木々のざわめき、トタン屋根に打ち付ける雨音を聞きながら食べた素朴な味わいは、これからもきっと忘れることはない。
ライター
大城くいじなう