AM 5:00。
体内時計で目覚めた私は、太陽の光を求めて、カーテンを勢いよく開けた。
いつもと変わらぬ朝を迎えるはずが、想像していた景色と違う…
見上げた空は、まだ夜明け前。
無数の星も街灯も、夜空にキラリと輝いている。
びっくりしたと言うよりも、ちょっと戸惑っていた。

私の住まいと沖縄では、日の出に約1時間の時差があることを知り、コーヒーを淹れながら、いつもの朝を過ごし、心の落ち着きを取り戻す。
「せっかくの機会だから、散策するかな。」
そんなことを考えていると、アロマの香りに誘われたのか、長男の目が薄っすらと開いた。
このところ、夜更かししてしまい朝が苦手な長男は
「きっと行かないだろうな」と思っていたが…
「日の出が見れるかもしれないから、ビーチまで行ってみようと思う。」と小声で話しかけると、珍しくすくっと起き上がり、出かける準備をはじめた。

これから部活動に行くと思われるジャージ姿の学生とすれ違い、ウォーキングをしているご夫婦と挨拶を交わす。
ふと、柑橘系の香りがツンと鼻をくすぐり、街路樹を見上げる。
「シークワーサーかな?それとも、カーブチー?」
沖縄らしい香りが立ち込め、瞬く間に爽やかな気分に。

(のちに、宜野湾海浜公園で同じ香りのする実がなる木を見つけ、フクギの木であることを知る。)
東の空にたなびく雲が、暁光に染まりはじめ、
「夜明けが近いな」と歩みを速めた。

まだ、仄暗いトロピカルビーチ。
沖縄らしいグスクをデザインしたのだろうか、美しい景観の遊歩道を歩く。
「このモチーフは何に見える?」と謎解きしながら、長男と会話を楽しんでいた。
気づけばキラリと目映い光が射し、あっという間に日の出を迎えた。

刻々と日は昇り、陽射しの暑さが増していく。
ふと、ポケットに無造作に押し込んでいたエコバッグがなくなっていることに気づく。
来た道を戻りながら探していると、ビーチクリーンをされているご年配の方が拾って下さっていた。
「おはようございます。すみません!そのバック、私のなんです…。」
「そうかー!探してるんじゃないかと思ってたんだ。良かった良かった!」 と、快く手渡して下さった。

人の優しさに触れ、心が温かくなる。
私は、あるうちなーぐちを思い出し、
「沖縄には『ゆいまーる』って言う『助け合い』を意味する素敵な方言があるんだよ!」と長男に伝えた。
私たちは目と目を合わせて頷き、「ビーチクリーンしようか!」と声をも揃えた。

サンド色したすばしっこいカニと戯れながら、ゴミ拾いに夢中になっていた長男は、
「海の生き物やビーチを利用する人のためになるといいね!」と、かいた汗がキラリと輝き、スッキリした表情を浮かべていた。
私は、彼の様子に思いやりの連鎖を感じ、この小さなきっかけが、大きな実りになるような予感がしている。

ライター
YUKAHA