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首里散歩 Vol.391 来て去る

台風が近づく夜。白いビニール袋が風にあおられてどこまでもフワフワと飛んでいくのを眺め、

(あー、今頃、沖縄も台風シーズンか、、、)

と思いにふけた。

何度か遭遇した沖縄での「台風」

経験値ゼロの私がまず驚いたのは、村の人々の『受け流し方』だった。

(停電なったらどうしようー!?)
(外の物、飛ばないようにしないとー!)
(食料どうしようー!!!)

あたふたしている私とはうらはらに、お隣さんは、
「今回(台風の大きさ)のは大したことないな」
大体がこの言葉で片付いていた。

台風の接近を知らせる天気予報とともに、
いつもの段取りで外の軽い小物をしまいこみ、
いつもの調子で大きな物は横に寝かせて壁際に。

「ロウソクはいくらでも(仏壇に)あるさー」と笑う。

そして、いつも通りゴーヤーや、そうめんのチャンプルーを私たちにおすそ分け下さる余裕まで持ち合わせていた。

お隣さんだけではない。
村の人たちも、見渡せばいつの間にか外回りの支度をし、ふだん開きっぱなしの雨戸がそっと閉じられていた。

少し大きめ(私には過去1番だったが、お隣さんはそう言っていた。)の台風の日には、夜に停電なんて事もあった。

あたりは真っ暗、なのに、遠くの町は明るい。
ゴウゴウとウナる風と雨にうたれ、 舞い踊る木の影に圧倒され、脅威を感じる瞬間もあった。

孤立感が襲いかかる、

(怖い。。。)

素直な感想だった。
しかし、雨と風が落ち着きだしたころ、2階の窓から外に、よーく目配せするとご近所さんの窓にロウソクの灯がポツポツポツ。

(あーーあそこに誰かいる、、、)

皆がこの「時」をしのいでいる

かすかにみえる優しい灯りに、なんだかホッとした。

翌朝。
キラキラと雨跡が光り、いつの間にかご近所さんの雨戸が開き、横になった物たちも、「いつもの場所」に起き上がって、「いつもの風景」に戻っていた。

停電が復旧した昼下がり、ニュースにはビニールハウスやサトウキビ畑の被害が映し出され、凄まじかったのだと、改めて感じた。

来て去る自然の摂理を粛々と受け流す。

私も経験値をいくつか重ね、アドバイスをもらって『受け流し方』を学び、備えたことはとても貴重な経験だった。

フワフワと泳ぐビニール袋が遠くなる。
(今回のは、大したことはないな、、、)

ふいに思い出だすのだった。

ライター
パッチンくるり