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首里石鹸 Vol.398 沖縄移住のはじまり

弟が沖縄に住みはじめた。

たしかに今年6月、沖縄に遊びに来た際に「住みたい」とは言っていたが、沖縄に遊びに来た友人たちはだいたいみんな「住みたい」と言うので、まさか本気とは思わなかった。

だけど来た。仕事を辞め、沖縄用の車を買って、船を渡って車ひとつで来た。家が決まるまでは車中泊でやり過ごすらしい。(男っていいなぁ)

沖縄移住初日、我が家に泊まりに来た弟は、特にわくわくした様子もなく「無職が来たぞ~」とダメ中年のテンションで訪れた。

弟は、わたしが移住してきた時とは違って、静かに、しんみりと沖縄のひとつひとつを味わっているようだ。

たとえばわたしは移住してからしばらくは毎日国際通りで飲み歩いたが、弟はコンビニでオリオンビールを買い、我が家で「あついなぁ」「湿度やばいな」と言いながらごくごくと飲んでいる。

わたしは移住してからしばらくは片っ端から観光とグルメ巡りにいそしんだが、弟はひたすら求人誌を見て、家探しを進めている。

「せっかく沖縄に来たのに、最初は観光したり飲み歩いたりしたらいいのに」と言うわたしに「別にそんなんには興味ない」と返す。変な沖縄移住者である。

こんなにきれいな海があるのに~

その後も「空が青いな」「虫がでかいな」とささやかな沖縄をひとつひとつ拾い上げては、特に浮かれることもなく(本人なりに浮かれているのかもしれないが)、ただひとつひとつの沖縄を見つけ続けた。

らしいね!と思い、きっと彼はこのテンションのまま、長く沖縄に住むのだろうと思った。沖縄に移住する人は多いが、数年で帰る人も少なくないらしい。だけどなんとなく、弟は長くいそうだなと思った。

ふと弟が聞いてきた。
「めんそーれって言われたら、なんて返したらいいん?」 沖縄に10年以上住んでいるのに、そんなこと考えたこともなかった。たしかになんて返したらいいのだろう。

ライター
三好優実