用事があって繁華街に出てきた。
多くの人が目的地へと忙しそうに舵をとる。
大阪駅の周辺は特にだ
交差する人の波と流れに乗れず
肩がぶつかり、ペコペコとお辞儀をして
リズムを崩し、波にのまれて、もう溺れそうだった。
なんとか用をすませ、少しでも静かな場所へ
いっそのことと、地下に潜り込む。
人の気配はだんだんとまばらになり、
いくらか穏やかになった。
(さて、私はいったい何処にいるんだろうか。)
感覚で来てしまった事を思い出し、途方にくれ、キョロキョロと見渡す。
と、そこに飛び込んできたのは
「ここです!!沖縄」の文字!

(えっ!?沖縄?!?!)
まさかの案内に驚きつつも、迷うことなく身体はそちらへと向かっていた。
すると、曲がった先に見えたのは、
ちんすこうや、紅いもタルト、ラフテーにスパム!!
ナーベーラーもシークヮーサーまで!!
沖縄でみかけた品がずらりと並んでいた。
そして流れるメロディーは、ネーネーズさんや、イクマさん、ビギンさん!
(あれっ?私は今、何処にいるんだろうか?)
気持ちがフワフワとして、なんだかもう沖縄にいるんじゃないか?とさえ思った。


懐かしい―。
沖縄の空港やショッピングモールでみかけたお土産売り場がゴッソリやってきた空間。
小さな「シーサー」の置き物や「琉球グラス」は、沖縄に住んでいた頃、帰阪の際に選んだ家族や友人へのお土産だ。
マンゴー味やミンサー柄といった、ひとつひとつが心をくすぶり、ワクワクした気持ちを呼び戻す。
龍宮城のように時を忘れ、しばらく懐かしさに浸った。
気づけば、ショピングカゴを持ち、
(あーこれ食べたいー!)
(あー!これこれー久しぶりー!)
と、あれも、これもと手にとった。
購入した品が、大変重くなったのは言うまでもない。
どれくらいウロチョロしただろうか。
地上へ、戻ると辺りはいつの間にか暗くなり、目に見えるのは、きらびやかな高層のビル。

ストリートミュージシャンの音色
さっきまで沖縄に居たはずなのに・・・と、キツネに化かされた気分だった。
(さて、ここは何処だろうか)
ひとまずバヤリースを片手にゴクゴク。
プハーっと息をはいた。

今日はハードな1日だったけれど
しばらくは沖縄を噛みしめてすごせそうだ。
ライター
パッチンくるり