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首里散歩 Vol.437 ありがとうありがとう

毎年、春先は、次々訪れるイベントで揺れる心の動きを、友達やお世話になった方々のくれる空気でそっと包み込みながら、自分を保っている。

昨日、息子の中学の卒業式があり、子育てに奮闘してきた時間が、放たれた矢のように、あっという間に一段落を迎えた。

「お母さん!幼稚園を見つけてくれて、本当にありがとう!」

移住して一年は、お稽古だけの生活だったので、毎日通える友達のいる場所が嬉しくてたまらなかったようで、入園当時から何度となく言われたこのフレーズと表情がずっと心に留まっている。特に何かの選択をしたわけではなく、自宅から最寄りの公立幼稚園なので、ちょっと肩をすくめながらうんうんと頷いて聞いていたものだ。

息子が地域や社会に歩み出した幼稚園と小中学校には、私も根を張るように、地域と繋がりを持たせてもらえた。

心の中で、

「私たち家族を、この地域に迎え入れてくれてありがとう」

そんな風に呟いて、それを伝える気持ちで過ごしてきたので、旅立ちの日は、寂しさの中に安心感があるような、なんとも言えない万感の想いだった。

そして、日が明けた今朝、毎年恒例の首里城公園見学に行ってきた。

去年、漆の重ね塗りの途中だった正殿は外観が整い、令和版の仕様になった詳しい説明により、首里城への理解が深まり、今年の秋の完成予定に期待が膨らんだ。

正殿の周りを見学して、正殿の手前に位置する西のアザナ展望台で解散した後、息子が「ここに行ってみよう」とワクワクした表情で誘ってきた。


「表情の豊かな子だったなぁ」と懐古しながらついて行ったところは、『京の内』という首里城内の聖域で、18世紀前半の時代に合わせた御嶽林を古文書などから調べて植栽したという場所だった。

『ガジュマル』と書かれた樹木が、いわゆる気根の降りた形ではなかったので、「まだ若いガジュマルなのかな?」と言うと、息子が目配せをして「ほら、今、ここから歩き出してるところだよ」と右の枝を剪定した株から細い気根が生え始めている部分を指差した。

その、パッと見て気が付かなかった、あまりにも小さな根が芽吹いている様子に、息子の幼い頃を連想してしまい、苦笑しながら進んだ。

歴史の歩みの中で、聖地として大切に護られてきた環境を目と空気で感じられる場所は、春先の心に、たくさんの栄養をくれた。

ふと見ると、茂みの向こうに、先ほどの正殿の龍たちが顔を出した!

順路を進むと、そこから、先ほど工事のパーテーション越しに見た正殿を、正面に見ることができたのだ!

「素敵な場所を、見つけてくれてありがとう!」

あの頃の息子のように、何度も何度も伝えた。

ライター
首里石鹸 白鳥恵子