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晴れ時々、首里 モノから伝わる沖縄のぬくもり 2021年7月26日

わたしの地元、沖縄県那覇市壺屋の「やちむん通り」。
「やちむん」とは、沖縄の方言で「焼き物」のこと。

その名の通り、やちむん通りには焼き物を販売しているお店や、やちむん作り体験ができるお店が並んでいます。

通りは石畳になっていて、コンクリートの道路から一歩入ると雰囲気ががらりと変わる。
晴れた日には、白い石畳で一層視界が明るくなり、雨の日には、シトシトと雨に打たれた石畳が雰囲気を醸し出してくれます。

わたしが「やちむん」に興味、魅力を持つようになったのは、前職で雑貨販売をやっていた時。

パステルカラーやキラキラと輝く可愛らしい雑貨に見惚れる日々でしたが、新商品として入荷した職人さん手作りの焼き物。
ひとつずつ丁寧に思いを込めて作られているのが伝わり、そこから沖縄の伝統工芸品でもある「やちむん」に興味を持ちました。

そこでやちむんのことをもっと知りたくなり、今回取材をしてみることに。

やちむん通りの中心に佇む『喫茶 南窯(ふぇーぬかま)』。
県文化財の「南窯(ふぇーぬかま)」に隣接しており、創業32年。
那覇市出身の島袋美奈子さんが営んでいいます。

味のある店内で、落ち着いた空間。
ここ、那覇市壺屋で生産された焼き物を「壺屋焼」と呼び、ずらっと並べられた壺屋焼がどれも素敵で、目を輝かせながら隅々まで見入ってしまいました。

美奈子さんの義理のお父様、(故)島袋常勇さんの作った壺屋焼を販売するため、ご家族でお店を始めたそうです。
開店当初は喫茶店として、壺屋焼に入れたコーヒーを提供していたそうですが、現在は展示・販売のみをしており、常勇さんの作品だけではなく、同じ窯元で作品作りをしていた4人の作家さんたちの作品が並べられています。

壺屋焼には、上焼(じょうやき(左))と荒焼(あらやき(右))のふたつの種類があり、上焼は中・北部の土を、荒焼は本島南部の土を使用。
また、焼き上げる際の温度に違いがあることや、 上焼は販売所から土を購入し、すぐに制作に取り掛かることが出来るそうですが、荒焼は土を一から自分で整え、作品を作り始めるそうです。

上焼は色付けもあり、様々な模様が描かれている。
作家さんの個性を感じられ、自分好みの絵柄を探すのはワクワクする。

荒焼は色付けや大胆な模様はなくシンプル。ただ、そのシンプルさが土の風合いや質感、独特な造形などを引き立たせてくれ、そこが渋くてかっこいい。

「最近は若い作家さんも増えて、いろんな柄やデザインのものがあるから選ぶのも楽しいですよ。」
沖縄の歴史、環境や人の温かさが伝わるモノを創り出す作家さんの作品に、魅力を感じる方が多く、芸大を卒業後、すぐに作家として活動する方もいれば、窯元で修行を受け、その後独立する若い作家さんが増えてきているとのこと。

現在は、コロナの影響で客足が減ってしまったり、壺屋焼のイベントがなくなったりと、 例年とは違った環境に寂しさを感じるという美奈子さんですが、
「地元の方が訪れたり、 知り合いが立ち寄ってくれたりするので、嬉しいですよ。」と、
ここに来るとほっこりする。という気持ちになるのは、きっと美奈子さんも、お店に来てくださるお客様も変わらないんだろうなと、今回の取材を通して感じました。

「シンプルなデザインだからこそ、生けたお花が映えるし、使用している土の関係で長持ちするから、私は壺屋焼の中でも荒焼が好きなんです。」と美奈子さん。
泡盛やお米を入れる保存容器としても壺屋焼を使用されていたそうです。

上焼しか持っていなかった私は、「荒焼が好き」という美奈子さんのお話を聞いて、すっかり荒焼に興味深々。
デザインは一緒のものでも、ひとつひとつ手作りなので微妙に形が違う。
そこがまた魅力で、じっくり見比べ手に取るモノは、なんだか愛着がわきます。

やちむん通りは、学生の頃にも通ったことのある場所でしたが、知らないことがたくさんあり、そしてそれを知ることで、より「沖縄のモノ」が好きになりました。

沖縄の魅力、人のぬくもりが、「やちむん」を通して伝わると嬉しいな。

ライター
首里石鹸 玉城悠以奈