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晴れ時々、首里 Vol.11 “昔ながら”から生まれる新しいもの。

私は昔から「色」が好き。色は重ねるたびに様々な表情をみせ、その度に心踊る。

思い出深い出来事に小学生の夏休みの宿題で作った紅型がある。
重なり合う「色」で世界に一つしかない作品が誕生するあの瞬間。大好きだったな。
沖縄の軌跡と言っても過言ではない「琉球紅型」。最近、思い出したように調べを進めていると、あるホームページのメッセージに惹きつけられた。

「新しいなかに文化がかおる、そんなものづくりでありたい。」

那覇市首里崎山町にある紅型工房「カタチキ」さん。
色が重なるときと同様の心躍る気持ちが抑えきれず、お話を伺いに行ってきた。

(左)比嘉裕子さん(右)崎枝由美子さん

「布の風合いや柄を通して沖縄を感じていただき、沖縄の旅を思い出す「もの」に。」
そう話すのは「カタチキ」の発起人、崎枝由美子さん。

工房には、やわらかい風でふわりと揺れるストール。
繊細な布の風合い、絶妙な色合いが、目を楽しませてくれた。
カタチキは姉の由美子さんと妹の裕子さん姉妹で支えられている。
工房を首里と南城市に構え、首里では手染めの染色を、縫製は南城市で製作する。

由美子さんを紅型作家へ導いたのは3歳から習う琉舞だった。
幼少期から沖縄の伝統工芸が身近にあることから、作り手としての興味が沖縄芸術大学へ向かわせる。そこで工芸染色科と出会う。
大学を卒業後、紅型作家の(故)藤村玲子師事へ弟子入り。
「今では珍しい弟子入りという形で先生がいる工房に入り、とても良い人生経験が出来た。」と由美子さんは当時を振り返る。

「師弟」の間柄を話す由美子さん、まるで母との思い出を話しているかのよう。そして同時に、過ぎた時間を優しく振り返る温かい笑顔が印象的だった。

その笑顔の表情が急に真剣になった。

師匠である先生の突然の死去。師匠不在となり工房は解散。
その後、由美子さんは結婚、出産と人生の転機を迎える。その後、慌ただしく経過する日々の中「先生から学んだ紅型を世に残したい。」と強く思うようになり、一念発起して「カタチキ」を起こす。
「独立1年目は紅型商品は全く売れなかった。」と由美子さんは言う。

そんな時に、ちょうど東京生活から生まれ故郷沖縄に戻ってこられた裕子さんに「カタチキ」の悩みを相談したところ、「紅型をストールにしたらどう?」 と助言された。
当時スタイリストとして働いていた裕子さんのアイディアから紅型をファッションとして取り入れることに。
「ストールもそうですが、ファッションとしての紅型の可能性を示してくれた妹に驚きました。そして嬉しかったのをよく覚えてます。」と由美子さん。

裕子さんは沖縄で別のお仕事をしていた傍ら、由美子さんの手伝いをしていましたが、「カタチキ」が正式に工房として開業する際に本格的に参画。姉妹二人でカタキチを創り上げていくことを決心した。

「姉妹でお店を経営していると、しょっちゅう喧嘩するんです(笑)。でも感覚やセンスは似ているから “カタチキらしさ”の方向性は一緒。もっと良くするために。安心して喧嘩できる唯一の相方なんです。」と語る由美子さんの笑顔から姉妹愛を感じた。

由美子さんの作る紅型と裕子さんのスタイリングが共鳴して、昔ながらの伝統的な装飾が、現代音楽のように奏でられる。それは、ストールや蝶ネクタイ、クッションなど、沖縄文化を持ち合わせた「私だけ」のものとして具現化される。

紅型の色には力がある。重なった色には物語が生まれる。例えばストールは、首元に巻くと華やかさを演出し着けている人の見た目の印象も明るくする。「カタチキ」のストールを身につけるだけで、気分転換になり、気持ちまで明るくなるというお客様の声も多い。
それが「紅型」の、「紅型の色」の魅力だと私は思う。

自分の作ったもので、人の印象が変わることに、やりがいを感じるという由美子さん。
「沖縄の伝統工芸を知るきっかけの一つとして、紅型を手に取ってみて欲しい。「カタチキ」の活動でもっと沖縄を好きな方が増えたら嬉しい。その活動を続けていくことが師匠への恩返しにもなり、沖縄の魅力を発信するために私たちができることだと思っている。」と強い意志を優しい笑顔とともに語ってくれた。

お話を聞き終えての帰路、なんだかワクワクと躍る気持ちを抑えきれなかった。紅型をもっと知りたい!と興味が湧いたのも事実だが、由美子さんと裕子さんが運営する「カタチキ」の紅型にどっぷり魅了されてしまった。
紅型の魅力を知った今、母へストールをプレゼントしようか、自宅の雑貨に取り入れようかと、欲しいものリストが更新され、紅型や沖縄工芸への愛着が深まった。

首里石鹸 玉城悠以奈

【カタチキ】
DATA:那覇市首里崎山町4-1 TEL/FAX:098-911-8604
営業時間:月曜日、金曜日、土曜日(10:00〜16:00)
※火、水、木は染色作業です。
定休日:日曜日、祝日
公式HP:https://www.katachiki.com
2012年4月創業。紅型のストールやバッグ、クッションといったファッション小物や生活雑貨も販売。姉の崎枝由美子さんが紅型を担当、妹の比嘉裕子さんがデザイン縫製を担当し姉妹で経営している。沖縄の方言で「紅型」を意味する「カタチキ」。古くから親しまれている「カタチキ」を工房名にして、生まれ育った首里の地で伝統の技を大切に、ものづくりに励んでいる。

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