蒸し暑さが残る、どんより雲の午後、ドライブへ。
「そろそろ自分の中で足りなくなっていたものを、補充したいなぁ」そんな気持ちで車を走らせ、海ぶどうの養殖場に着く頃には、サーっと陽が差してきた。
ノスタルジックな景色と、「ここは世界でたった一つの施設だからね」というおじさんの言葉に、胸がキュンとしながら、海ぶどうを育てる丁寧な工程に耳を傾ける。田舎の親戚の家のような、なんだか居心地がいいその場所で、ぷりっぷりの海ぶどうを「たまらない…」と堪能する息子。母と目を細めてその様子をしばらく楽しみながら、その新鮮な海ぶどう、もずく、海ぶどうを砕いた塩など、思わず顔のほころぶ自分達へのお土産をたくさん買った。
人もあまり見当たらず、どこまでも続いていく道と景色が心地よくて、「あの海の色!」「あの雲見て」「あそこだけ光が当たってるね」などと、それぞれの目に留まるお気に入りを言葉にしながら進んでいくと、辿り着いたのが、以前から気になっていた浜比嘉島のホテルだった。
案内されたのは、広がる水平線が一望できるソファで、どこにもお客さんは見当たらない。
太陽の光が変わる度に、変化する海面に気づく母はまるで少女のようで、みんな役割を忘れて、穏やかな笑顔のまま、それぞれの心地よさを感じている。
そういえば、こんな時間、今までにあったかな?
目指すわけではなく、不意に、それぞれが、純粋に目の前の素敵を受け止め続ける。そんな心地よさに酔いしれながら、刻々と変わる色を見つめていた。
ライター
首里石鹸 白鳥恵子