この春、県内の様々なイベントの科学ショーでも大人気のセイタ先生が、沖縄県立博物館で、『アートと虫の美しい世界』という個展を行った。
沖縄の古い町並みで生まれ育ち、幼い頃からご近所の職人さん達に親しんできたセイタ先生は、好きなことや気になることをなんでも自分で試して今に至ったという。
今回の個展は、そんなセイタ先生が小さい頃から愛してやまない虫たちを、虫が苦手な人にも、色々な方向から好きになってもらおうという肝入りの企画で(個展開催の)夢が叶ったと、熱く語っていた。
展示は、自然界にいる虫をそのまま標本にしたとは思えないような発色や質感で、その魅力を引き出す鉱物や異素材との組み合わせや、切り絵や沖縄に古くから伝わる仕掛けおもちゃの装飾など、どれも専門性をベースにしつつ芸術性が高く、心に明かりが灯るような素晴らしさだった。
敢えて薄暗い会場は、来場者に自然環境の中にいるような感覚を掻き立て、そこで自ら、光を当てて、能動的に鑑賞することで、「見たいと思ったものを見る」という体験の中で、知識欲がどんどん加速する。
都市開発が進み、虫との接点がどんどん失われていく時代に、虫の魅力や可能性を、将来の沖縄の豊かな自然を担う子ども達に伝えたい、子ども達に、興味のあるものを追求していく知恵と道標を伝えたい、という、双方向に向けた優しさに満ち溢れていた。
まるで、沖縄のおじいやおばあが、子どもを驚かせたり笑わせたりしながら、自然の動植物の面白さや手仕事を伝える雰囲気に似ている。展示を何度も観に行く度に、「あぁ、なんだか沖縄らしいな」と感じて、年頃の息子も、大人である自分も、幼い頃の感覚に戻って、好奇心のエネルギーをたくさん受け取った。
思えば沖縄では、生活の色々な場面で、この感じに似た優しさを感じることがよくある。通りすがりの人からも、出会って間もない人からも、ずっと知ってる人からも。
SDGsという言葉がよく聞かれるようになる前から、常に自然の存在を感じ、手作りや手作業の営みを重んじて、目の前の相手に温かい余韻を残す優しさ。
いつか、私も、そんな余韻を残せるようになれるかな。
今日も散歩で出会う景色も、どこか沖縄らしくて、微笑んだ。
ライター
首里石鹸 白鳥恵子