高校生の頃、毎日歩いていた道を久しぶりに歩く。通いなれた道は少しの変化を見せつつも、帰路に就く学生たちの姿や、部活中の賑やかな声が聞こえてくるのは今も変わらない。友達と部活終わりに笑いながら帰った思い出や、思春期特有の悩みにひとり考えながら歩いた記憶など、あの頃感じていた様々な感情や思い出がよみがえる中で進む道は、どこか不思議で、だけどなんだか心地よい気分だった。
そんな、私にとっては様々な思い出がよみがえる街に、静かな佇まいで建つお店が、今回取材をさせていただいた「日本料理 行雲(こううん)」さんだ。
県外・県内で修行を重ね、季節に合わせて食材や、器、そしてメニューも変えるという店主の仲西 智顕(なかにし ちあき)さんに、料理の奥深さや、料理人として大事にしていること、そして、今後の叶えたい夢をお伺いしました。
※以下「智顕さん」と称する。
料理が身近に合った子ども時代
智顕さん 物心ついた時から料理が好きで、よく「料理の鉄人」(1993年-1999年まで放送されていた料理をテーマとしたバラエティ番組)を見ていました。その中でも和食の道場六三郎(みちば ろくさぶろう)さんが好きで、魚を手際良く捌いてるシーンが印象に残っていますね。
また、両親が共働きだったこともあり、小さい時から玉子焼きにシーチキンやマヨネーズを入れるといった簡単な料理を作っていました。なので、特別なキッカケがあって料理を始めたわけでなく、生活の中で自然と料理をするようになりましたね。
“好き”と”ご縁”で見えてきた未来
智顕さん 部活動でずっとサッカーをしていましたが、それ(サッカー)を仕事にしたいとは考えておらず、じゃあ進路をどうしようかと悩んでいる時に、たまたま先輩から栄養士という仕事があるんだと教えてもらいました。
はじめはそっち(栄養士)を考えていただのですが、美味しい料理を作れるようになりたいという気持ちと、将来自分のお店をもちたい。という夢が芽生え、料理人の道に進むことにしました。
そこからは本土に修行に行けるようにお金を貯めようと、県内の飲食店で働き始めました。すると、そこで働いていた中に、たまたま京都で料理の修行をしたという方がいらして、その方の紹介で(京都の)お店で修行させていただけることになりました。
たまたま入ったお店に、自分が行きたいと思っていた場所で修行していた方がいるって、今思えばすごい確率だなと思うのですが、もしかしたら自分の願いを行動に移したことで引き寄せられていたのかもしれませんね。
辞めようとした時、胸にストンと落ちてきた一言
── 何かを極めようと思うと、並大抵のことではないと思うのですが、今までに料理の道をあきらめようと思ったことはないのでしょうか?
智顕さん ありますよ。むこう(本土)で一生懸命頑張りましたが、少し不本意な形で帰ってくることになって、、、それで、“もう、料理の仕事はいいや…。”って思っていたのですが、仲の良かった友人と会った時に、「俺はこれからやりたいことを見つけに行くけど、お前はやりたいことが見つかってる。」と言われたんです。
自分の中では完全に終わったと思っていたことが、友人にはそんな風に見えているんだ…!と衝撃を受けると共に、その言葉がすっと自分の中に入ってきて、それならもう一度頑張ってみようかと、決心しました。
あれからずいぶん経ってから、友人にこの話をしたのですが、本人はまったく覚えていませんでしたね(笑)。
もう一度、料理の道を目指すと決めてからは、県内の割烹料理店やお寿司屋さんで働かせてもらい、今から2年半前に今のお店をオープンしました。今となっては、あの時に辞めないで本当に良かったと思っています。
逆境の時期も糧に変える
智顕さん 働く中で、なんとなく今のお店の構想が出来はじめ、オープンに向けてコツコツ準備を進めている時期に、ちょうどコロナが流行りだして自粛期間になったんです。ですが、その時期に改めてお店の構想を具体的に考えたり、提供したいメニューを試作する事が出来たんです。もちろん大変なこともありましたが、今思うと必要な時間だったのではないかと思います。
料理や器を通じて感じる、季節の移り変わり
智顕さん 料理をしていると、日本ってすごく多彩な行事があるのだなと感じます。例えば、9月はお月見、10月は重陽(ちょうよう)の節句(旧暦9月9日)など、四季折々の行事や地域ごとにも異なる伝統文化、さらには、旬な食材や料理の内容も変わったりと、春・夏・秋・冬だけでない、細やかな移り変わりがあるんです。
そんな日本人が昔から大事にしていた細かな季節の移り変わりをもっと感じていただきたいなと思いながら、日々料理を作っています。
※行雲さんでは季節に合わせて1ヵ月に1度、お出しするメニューを変更しております。
今だからこそ思い浮かぶ、これからのこと
智顕さん お店を出してから2年半になるのですが、ありがたいことに定期的に通っていただけるお客様も増えました。また、ご来店の際に次回の予約をとってくださる方もいて、本当にありがたいなと感じています。すごく嬉しい事であると同時に、プレッシャーも感じていますが、せっかく足を運んでくださった方に「美味しかった。」と満足して帰っていただきたいんです。
なので、これからもコツコツと美味しいものを作り続けて、ゆくゆくは沖縄の食材や文化を積極的に取り入れた“行雲でしかできない”そんなお店や料理を作っていきたいですね。
蓋を開けるたび、新鮮な驚きといつまでも味わっていたい美味しさが待っている。それは昨日よりも今日、今日よりも明日と、料理と自分自身に真摯に向き合い続ける智顕さんの心持ちと、どこまでも食べる方の事を想った丁寧な仕事から出来上がるものなのだろう。
食べるたびに美味しさが増していく智顕さんの料理の数々を、ぜひみなさまにも味わっていただきたい。そして、大切な方と一緒に美味しいものを楽しめるこの瞬間をぜひ大事にしてほしい。
首里石鹸 中里ゆきこ
【日本料理 行雲】
■DATA:〒903-0802 沖縄県那覇市首里大名町3丁目3
■営業時間:昼 11:30~13:00最終入店
夜 18:00~19:00最終入店
※お昼のご予約は2日前まで&2名様以上1組のみの御案内となります。
■お電話:070-8474-7613
■定休日:不定休
※詳細は公式Instagramにてご確認ください。
■駐車場:有り(4台)
※詳細は公式サイトにてご確認ください。
~取材後記~
“蓋を開ける楽しみを味わっていただきたい。”との思いから、Instagramや公式サイトにその時期のコース料理の内容はあげないという智顕さん。細やかな気遣いと、足を運んでくださるお客様の事をとことん考える姿勢にも深く感動いたしました。今までの美味しいお料理の数々や、素敵な器が見れるInstagram&公式サイトもぜひ併せてご覧ください。
~ちょこっと小話~
実は9月に販売を開始した「淡雫モイスチャーハンドウォッシュ 月下美人の香り」は、行雲さんから着想を得て、開発されました。日本料理の繊細な食事の邪魔にならないように、テクスチャー、保湿力、香り、デザイン、すべてにおいて拘って作った、贅沢なハンドウォッシュです。また、首里石鹸の「フェイス&ハンドボタニカルリッチフォームソープ+」もお店でご愛用いただいております♪これからも、行雲さんでの素敵なお時間に、首里石鹸の香りが寄り添えていると嬉しいです。
首里石鹸 公式YouTubeにて
「晴れ時々、首里」の動画も絶賛配信中です!
YouTubeでは、おなじみ弊社の甲斐ちゃんが美味しい料理の数々を頂いてきました♪智顕さんからお店で使用している器の貴重なお話もお聞きしておりますので、ぜひYoutubeショートも合わせてご視聴いただけますと嬉しいです♪