寒い寒い日々が急に切り替わり、20度前後の、ポカポカ穏やかな気候にホッとしている。
その、不意に気持ちが緩むような嬉しい感覚が、最近何度もあったなぁと思いを巡らすと、ひらひらと、目の前を行き来していたオオゴマダラが思い浮かんだ。
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寒い時期に、まるで語りかけるように間近に現れるので、その15センチ近くもある大きな羽の美しい姿と振る舞いは、一瞬にして心をとらえて離さない。
顔や身体までしっかりと特徴的な縞模様が広がっていて、愛嬌のある表情に、こちらも笑みが溢れる。
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オオゴマダラは「南の島の貴婦人」と呼ばれることもあり、沖縄の県蝶だという。
確かに、大空を大きな羽で謳歌しながら、近くに戻ってきては語らうように休息する様子は、舞のようでもあり、琉球旋律が聴こえてくるようだ。
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たまたま居合わせた母も、少女のように歓声を上げて、「見事ねぇ」と貴婦人と共に、しばらくその嬉しい時間を一緒に過ごした。
…
息子の中学校は、三学期は筆記の定期試験も早々に終わり、先日、「来週には三線の試験があるんだ」と困ったような嬉しいような、なんとも言えない顔で話してきた。
そういえば、授業参観の時に、どこからか、琉球旋律の三線の音色が聴こえていた。
その音色を思い浮かべながら、小さい頃、三線に触れる機会があると、夢中になっていたことを思い出した。
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すると、「合(あい)、四(よん)、工(こう)でしょ?で、なんだっけ、乙(おつ)、上(じょう)、五(ご)だよね」と、三線の特徴的な「工工四(くんくんしー)」という楽譜の読みを確認したと思ったら、エイサーで踊るのが大好きな『唐船ドーイ』のメロディを正確に歌い始めた!
これまで合唱コンクール前の自主練習では、心配になるほどメロディを取るのが苦手だった息子とは思えず、思わず一人で立ち上がって拍手喝采!
「素敵!本当に素敵!学校で教えてくれるなんて、感謝しなくちゃね!」と、肝心な三線の演奏は横に置いておいて、沖縄の文化が日常の自然や生活にあり、それが身についていくことが嬉しく、しばらくその余韻に浸って過ごしている。
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ライター
首里石鹸 白鳥恵子