あれは幼稚園に入る前の事。
自宅からぬけだしては、徒歩5分の祖父母の家に頻繁に遊びに行っていた。
いつも行くと「よく来たね~」と笑顔で迎えてくれる祖母は、「これ、かめ~(食べなさい)あれ、かめ~」と色々なものを冷蔵庫や戸棚から出してくれた。
中でも2人の大のお気に入りだったのが「ピンクグレープフルーツ」。
祖母の手で皮と実がどんどん綺麗に分かれていく様子が見てきて気持ちいいし、瑞々しい香りが辺りに立ち込め、まるで祖母がたまにつける、戸棚の奥の香水のような、瑞々しく爽やかな香りに包まれている心地が何よりもすきだった。
祖母の見ていないすきに、剝いた皮をズボンのポケットに隠し、隠れて香りをかいだり、祖母の真似をして手首に香りをつけてみたり…“祖母と自分だけの香り”を密かに楽しんでいた。
祖母の車の後部座席で景色を眺めていた道を、今は私が祖母をのせて走っている。
「ついこの間まで~」と話す、50年前の話にうなずきながら、よく遊びに連れて行ってもらった公園の横を通り過ぎる。すると、「この公園、ゆーきーを連れて、よく来たね~」と小さく呟く祖母。
まるで昔の私と祖母を見ているかのような、そんな横顔が窓ガラスにうっすらと映る。
祖母の視線を追ってみた公園に、一瞬あの頃の二人の姿が見えたような気がして、“ああ、祖母も私も年を重ねたんだな…。”そんな少し寂しい気持ちがこみあげる。
すると、おもむろにカバンから取り出した香水を祖母がシュッと手首につける。
ふわっとひろがる「ピンクグレープ」の香りに笑みが浮かぶと同時に、「ゆーきーがくれた香水いい香りさ~。」先ほどまでの哀愁漂う気持ちを爽やかな香りが優しくつつみ、心の棚にそっと戻してくれた。
「今度、久しぶりにあの公園寄ってみようか~?」と明るく話す車内に、ほのかに残る香りが私たちをそっと包んでくれているような気がした。
首里石鹸 中里ゆきこ
スキンオードパルファム Bingata -紅型-に込めた想い
Bingata -紅型-
15世紀前後に誕生し、王府の保護を受けて首里を中心に発達してきた『紅型』。 鮮明な色彩、大胆な配色、図形の素朴さは時代を経てもなお、私達に沖縄の情緒を強く伝えてくる。 『春夏秋冬』を一つの模様として描かれるのは四季の変化が穏やかな沖縄らしい。 伝統衰退などの窮地を乗り越え、現代に続く技を守り抜いたのは沖縄の誇りである。沖縄特有の染め物“紅型”に込められた「鮮やかさ、情熱、変化」を言葉とともに受け継ぎたくて名に配しました。
「香水特別セット」はそんな思いのこもった香水たちを、香りを選べてご購入できるセットとなっております。なかなか会えない大切な方を思い浮かべたり、楽しい家族やご友人との思い出に元気をもらえたり…そんな香りを纏うくらしはどうでしょうか。ぜひこの機会に、ご香味いただけますと幸いです。
■デビューキャンペーン販売期間:2022年9月1日(木)~9月30日(金)
対象店舗:オンラインショップ、各ギャラリーショップ