昔からある沖縄のお菓子と聞くと、「サーターアンダギー」や「ちんすこう」が有名だが、私が好きなのは「アガラサー」と言われる黒糖味の蒸しパン。
材料は至ってシンプルで、薄力粉・ベーキングパウダー・黒糖・水・サラダオイルで作れるのだが、シンプルで素朴な味だからこそ、少しの違いで味が変わったりする。
材料を入れたボウルを祖母がせっせと混ぜるのを見ていると、ふいに「くろざーたー(黒糖) は美味しいものを使うんだよ。」と、言われる。「味見できないのに、どんなして美味しいってわかるの?」と聞くと、「粉がついているものを探したらいいさぁ。」と返された。「ふ~ん。」と返しながら、残った黒糖を一口かじる。
ほろっと崩れ、じんわり広がる優しい甘さがおいしい。飴のようにころころと転がしながら、祖母の手元を見つめ続けた。
ぱかっと開けた蒸し器から広がる甘い香りを胸いっぱいに吸い込みながら、ふんわりもっちもちなアガラサーを口いっぱい頬張る瞬間を想像する。「庭にいるおじぃに、三時茶(さんじちゃー)にしよ~って言ってきて~」という声と同時に、縁側から音がする。
「おじぃー!美味しい黒糖ってどんなして選ぶかわかるね~?」と声をかけながら、ホカホカのアガラサーを手に縁側に向かった。
首里石鹸 中里有紀子
≪黒糖ひとくち解説≫
黒糖に含まれる天然のオリゴ糖「ラフィノース」は、腸内の善玉菌であるビフィズス菌を増やす働きがあるといわれています。腸内環境を整えることで、便秘解消やニキビ・吹き出物などの肌トラブルの改善、免疫力を高める効果が期待できます。さらに、黒糖特有の色素成分である「コクトオリゴ(黒糖オリゴとも呼ばれる)」は、肌にうるおいを与え、乾燥を防いだり、メラニンの生成を抑えて、シミやそばかすを防ぐ効果もあるといわれています。黒糖は「肌にも身体にも良い甘味」と言えますね。