久しぶりの青空が広がり、涼しい風の吹く午後、一枚の手紙が届いた。シンプルな便箋に綺麗な文字で書かれたわたしの名前に、すぐに彼女からの手紙だと気づく。わくわくする気持ちをまずは落ち着けようと、温かい紅茶を一口。
はやる気持ちで開けた便箋からは、彼女が好きなハーブとオレンジピールの香りがふわりとした。手紙には彼女の近況ときれいに咲くハーブの写真、自家製ドライフルーツを使ったサシェが入っていた。
写真に写っているハーブの説明と入っていたサシェを作った時の話を、彼女らしいユーモアを交えて書いてくれているのに、肝心の彼女はどこにも写っていない。「本当に、彼女らしいな~。」と思いながら読んでいると、そんな彼女との出会いを思い出した。
以前住んでいた家の近くに、美味しいスパイスカレーのお店があった。わたしはハマったものができると頻繁に足を運んでしまう性分で、お休みの日恒例の溜まった洗濯物と部屋の掃除を終わらせ、その日もいそいそと出かけた。
美味しいカレーを食べ終え、まったりとしていると、「これ、良かったら。」と出してくれたのはドライオレンジが添えられたハーブティー。紅茶は好きだが、ハーブティーはあまり飲んだことが無かったので、「ありがとうございます。頂きます。」と返し、早速一口飲んでみた。
すっきりとした紅茶の味に、オレンジの苦味がアクセントに感じるその飲み物は、意外なことに先程食べたカレーとも相性がいい。思わず「美味しい。」と呟くと、嬉しそうに横から「でしょ?」と声がかかった。
カレー屋さんのお友達だという彼女は、ハーブを育てたり、自家製ドライフルーツを作るのが趣味で、今は友人たちに自分で育て・作ったハーブティーとドライフルーツをお裾分けしてるんだとか。
のちのちは大きなお庭で自分の好きな植物を育てるのが夢だと聞かせてくれた。そんないきいきと楽しそうに話す彼女は、まるで先程のハーブティーのような飾らない人柄と温かさを感じた。
今はわたしも彼女も別々の街に引っ越し、時折思い出した時に連絡をするくらいなのだが、今年のハーブや美味しいドライフルーツが出来上がった時などは、必ず手紙を送ってくれる。
懐かしい彼女との思い出と香りを運んできてくれた手紙を眺めながら、そっと彼女お手性のサシェの香りを吸い込む。
”来年の春に会いに行こうと思っていること、もう話しちゃおうかな?“と、想いながら、わくわくした気持ちで返事を書きはじめた。
首里石鹸 中里ゆきこ