今も昔も、沖縄の自然を愉(たの)しむのは、最高の時間。
移住前の旅の記憶も、「ここに住みたい」と思った景色も、リアルに思い出されて、沖縄での日々の生活と共に、どんどん積み重なっている。
長年、いつか参加したいと思っていた、『ガンガラーの谷』のガイドツアー。
いつでも行けるのに、なんだか大切に、その機会をとってあった。
鍾乳洞の受付スペースで、沖縄は石灰岩によって、保存に恵まれた土地で、この場からも2万年前の貝の釣り針が見つかり、港川原人の居住区として発掘が進められていることを学ぶ。
沖縄南部の土地には珍しい、高い木々に圧倒され、上を見上げると、鍾乳石が顔を覗かせている。
馴染みのガジュマルもスケールが違い、空の方から足元に多くのつるを下ろし、これから何年もかけてつるは根となり、川に向かって根を広げていく途中だという。
この、時が止まったような瞬間を、何度も興奮して話す自分が見えるようで、まだ、少しだけ幼さの残る息子の表情を見ながら、何十万年という時の波を想像する。
石を投げると、ガン、ガン、ガン、ガラ〜ンと奥底まで落ちていくことから『ガンガラーの谷』と呼ばれたというこの一帯には、多数の洞窟がある。高い壁に覆われていて、まるで何かに守られているような、心地よさに包まれる。
動物を焼いた跡や埋葬跡、装飾品などが見つかっている現場は、地表からの浅さから、2万年前からほとんど環境が変わっていないという。
両側から朝日と夕陽の光が入る、静かな洞窟で、暮らす日々。
差し込む太陽、近くに流れる川、爽やかに流れる風が、どこまでも優しい。
最初は、息を潜めて興味深く吸収した景色が、いつの間にかここでの生活を感じる情景へと変化していた。
なんだか、いつもの浜辺の夕陽が、無性に恋しくなった。
ライター
首里石鹸 白鳥恵子