どこか案内するとなると、思い浮かぶのは決まった場所ばかり。
「また行くの?よく飽きないね」
新しいところを探して、新たにお気に入りに加わることもあるけれど、お勧めするには、色々な季節や過去の想いが記憶に残っているところに連れて行きたい。
先日、しばらくぶりに首里の石畳に向かう途中で、以前はなかった、空き地を使った駐車場を見つけた。
「観光のために地域で用意した駐車場なので、ご自由にお停めください」と、温かみの感じる注意書きがあった。いつものお気に入りのスポットに行くには、近所のお店などに了解をとって停めさせてもらっていたのに、なんだか「待っていた」と手を差し伸べられたような、光栄な気持ちになる。
初めての、街の下の方から石畳を上がっていく経路で、今まで知らなかった景色に出会ったりして。それなのに、とても懐かしかったり。
大赤木の周囲の鬱蒼として歩きづらかった道も、きれいに整備されて、あの時感じた、進んで赤木に近寄って行く時の戸惑いがなかったね。少し寂しいけど、今日の気持ちも、また重なる記憶に残していこう。
お昼も、お気に入りのお店の一つはなくなっていた。
亡き父も連れてきた記憶のあるもう一つのお店では、以前は景色の一つだった、店舗の手前の一角に、吸い寄せられるように入り込んだ。
当時の生活スペースや暮らしの調度品がそのまま残されてあり、展示家屋をゆっくり周り、時間を忘れた。
以前、訪れた時はどんな自分だっただろう。あなたはどうしていただろう。
「沖縄に引っ越してくれて、本当にありがとう」
その言葉と、ふと目をやった庭の池で、金色の鯉が、仲睦まじく身を寄せ合っているのを、一緒に心にしまいこんだ。
ライター
首里石鹸 白鳥恵子