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晴れ時々、首里 Vol.26 みんなにやさしい社会は、人との関わりの中にある。

久しぶりに太陽が顔をだし、柔らかな光が溢れた午後。
以前より首里石鹸の石鹸箱の組み立て作業をお願いしている社会福祉法人 若竹福祉会さんに伺った。

施設長の村田 凉子(むらた りょうこ)さんが、「こんにちは!ここまで来ていただいてありがとうございます!」と声をかけてくれた。やわらかな笑顔と相まって、まるで陽だまりのようなあたたかさを感じる。

「こんにちは!こちらこそ、お時間とって頂きありがとうございます!」と返すと、「いえいえ、私も利用者の皆さんも朝から楽しみにしていたんですよ!さぁ、中にどうぞ!」と笑顔で迎え入れてくれた。

写真:社会福祉法人 若竹福祉会の正面玄関。様々なお花と緑にあふれている。
写真:施設長の村田 凉子(むらた りょうこ)さん
※以下「凉子さん」と称する。

施設に入ってまず目が留まったのが、エントランスに飾られた絵や陶芸・工芸作品の数々。
近くで見るとすべて漢字でできている白黒の絵だったり、細かな毛流れまで表現された、どこかひょうきんな顔のシーサーなど、思わずじっと見入ってしまう。

それは、作品の細かさだけでなく、一つとして同じものは無いのに、なぜだか全ての作品に言いようのないあたたかさを感じたからだ。

この余韻にいつまでも浸っていたいと、周りの声も聞こえないほどに見つめ続けていると、ふいに「素敵でしょ?」と声を掛けられた。

その途端、パンッと私だけの空間が消えて、周りの声が戻ってきたとともに、嬉しそうな横顔がこちらを向いた。

「彼らの作品って、良く見せようとか、上手く描こうとか、そういうのが全く無くて、ありのままの心で作っているの。だから見ている私たちにも感じるものがあるんだと思うの。」

その言葉に心から納得した。けれどこの気持ちを表す言葉がどうしても出てこなくて・・・少し潤んだ瞳を誤魔化すように、「本当にそうですね。」と、頷いた。

お話を伺う前に、施設を案内して頂いた。
少しだけ…と、作業を手伝わせて頂きながら、皆さんとお話しする空間がとても楽しかった。

写真:作業をしてくださっている利用者の皆様。左から陽子さん、英世さん、百合香さん、里奈さん。
写真:一つずつ丁寧に作業をする陽子さん。

その後、先程お会いした利用者さん達の話しや、支援スタッフさんの話、そして若竹福祉会がこれまで続けてきた取り組みなどをお聞きする。

色々な話に惹き込まれる中で、凉子さんのこんな一言が心にとまった。

凉子さん ここ(施設)のパンフレットにも書いてある「人が光を放つのは、人との関わりの中。」という言葉は本当にそうなんです。今の世の中では“障がいをもっている”ということが先に立ってしまいます。ですが、彼らは私たちに様々なことを教えてくれる素敵な人達なんです。なぜなら、“こうでなければならない”という枠や固定観念に縛られず、前向きで、どんなことも受け入れる強さを持っているんです。少数というだけで生きにくくもある彼らですが、だからこそたくさんの人と関わることが大切ですし、必要なのだと思います。

その言葉の通り、若竹福祉会では色々なことに取り組んできた。

パンやお弁当を作って販売したり、自分たちの畑で無農薬で栽培した野菜を使ったカフェの運営、さらには廃業間近だったちんすこう屋さんのちんすこう(現在「平輪(へいわ)ちんすこう」の名前で販売中。)を引き継ぎ制作・販売も行っている。

凉子さん 私たちが現在販売している「平輪ちんすこう」は、元々普天間基地のある宜野湾市の嘉数公園で、友果園の平良夫妻が長年販売していたんです。口当たりが良くてサクサク。一度食べたら忘れられない美味しさが評判でした。

写真:嘉数高台公園の展望台。中からは、宜野湾市の街並みが一望できる。
写真:平輪(へいわ)ちんすこう。創始者の平良さんの「平」と、幸せの「輪」から「平輪ちんすこう」と名付けられている。

凉子さん さらにそのちんすこうに乗っている黒糖のアイシングは、実は普天間飛行場を模していて、基地を食べてなくしてしまおう!との願いを表現していたんです。
そんな長年全て手作りを続けてきた平良夫妻ですが、年を重ねるうちに、だんだんと難しくなり、そろそろ区切りをつけるためにも引退しようと考えている。とお聞きしたんです。ですが、このちんすこうはここで終わらせてはいけないものだ。との思いが消えず…。駄目でもいいから一度お話をしたい。とご連絡し、今では若竹福祉会で引き継がせていただく事になりました。

写真:平輪ちんすこう作りのご様子。ひとつひとつ確認しながら丁寧に作られている。

その行動力や原動力に感激すると共に、若竹福祉会では何を大事にしながら活動しているのかをお伺いすると、

凉子さん みんなにやさしい社会になればいいなと思っているんです。
彼らは与えられたものを素直に受け入れます。それは食に関しても同じ。例えば農薬を沢山使用して作られている野菜もそうとは知らずに食べてしまい、その結果、身体に悪影響を及ぼしてしまうかもしれない。でも、よく考えれば、それって誰にでも起こりえるんです。健康な土が美味しいお野菜を育てるように、みんなにやさしい社会になれば、今を生きる私たちみんなにいいことが沢山あるんじゃないかな。と、そう思っています。



互いに助け合い、補いながらも、自分らしく生きる。
それは祖父母が普段から口にする、「何か特別な事をしなくても、人が人を想う気持ちは伝わるんだよ。」という言葉に通じているような気がした。

帰り際、首里石鹸の箱折り作業をしてくれていた利用者さんたちが、窓から手をふってくれた。心からの笑顔と「また来てね~!」と、大きく手を振ってくれる姿に応えるように、こちらも大きく手を振り返す。

人の優しさ・温かさをありのまま受けとめ、そしてそれを自分も誰かにあたりまえに行う。そんなあたたかな輪が広がっていったなら、“みんなにやさしい社会”って案外難しい事ではないのかもしれない。

首里石鹸 中里ゆきこ

【社会福祉法人 若竹福祉会】

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■DATA:〒901-2102 沖縄県浦添市前田 998-3
■お電話:098-877-0664
■概要:社会就労センター(わかたけ、りぼーん、cafe飯ギャラリーさまさま)、地域生活支援センター「Enjoy」、南部地区 障がい者就業・生活支援センター「かるにあ」の運営を行っている。

~取材後記~

首里石鹸の箱折り作業をしていただいている利用者の皆さんと、支援スタッフの長崎 優香(ながさき ゆか)さん、宜野座 智恵美(ぎのざ ちえみさん)さんに教わりながら、私たちも一緒に作業させて頂きました。手袋を付けて、いざ!と始めると、これが中々難しい。しかも、綺麗かつ丁寧に組み立てようとすると、1つの箱が出来上がるのにも時間がかかりました。(横を見ると、皆さん私たちの倍は完成しておりました。笑)それを皆さん「楽しいからもっとやりたい!」と仰っていただきました。

※ピンクのパーカーを着用されている方が長崎 優香(ながさき ゆか)さん。紺色のカーディガンを着用されていらっしゃる方が宜野座 智恵美(ぎのざ ちえみさん)さん。

後日、若竹さんが運営している「Cafe めしギャラリー さまさま」に行かせて頂きました。美味しご飯と素敵な作品の数々(※一部、販売している作品もございます。)に、心もお腹も満たされました♪皆様もぜひ足を運んで頂けますと嬉しいです。

首里石鹸 公式YouTubeにて
「晴れ時々、首里」の動画も絶賛配信中です!

凉子さんをはじめ、スタッフの皆様や利用者の皆様があたたかく迎えいれてくれたおかげで、弊社の甲斐ちゃんと楽しくインタビューをさせていただきました!その様子はぜひYoutubeショートでご視聴いただけますと嬉しいです♪