「秋がきた」
外に出た瞬間、ポロリと口から出た自分の言葉に驚いた。
沖縄には秋がない、と言われている。
そしてわたしも「沖縄には秋がない」とずっと思い、ずっと言ってきた。
その日も相変わらず気温は30度くらいあり、いつものように半袖を着ていた。だけどわたしは肌に間違いなく「秋」を感じたのだった。
ほんのり空気が乾燥していて、風がすこしだけパサパサしている。そんな空気の肌触りに、秋がきた、と思ったのである。
そうか、沖縄にも秋があったのか。
和風ではない、なにか別の感性がとらえる秋。そういうものが沖縄にはきっと、あるのだ。わたしは移住9年目にして、その感性を獲得したのかもしれない。
そんなことを思い、ニヤニヤした翌日、外に出てみると空はカラッと晴れていて、セミが元気よく鳴いていた。
あれ?ぜんぜん夏じゃん。
ビカビカと照り付ける日差しに湿った空気。
肌にはじわりと汗が滲む。
呆然と佇むわたしに、太陽は容赦なく光をまき散らす。日差しが恐ろしいほどまぶしい。
一気に消耗したわたしは家に引き返し、日焼け止めをガンガンに塗りたくり、帽子をかぶって外に出た。
それ以降、わたしはまだ「秋」を感じていない。
ライター
三好優実