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晴れ時々、首里 Vol.27 家族をつなぐ蜂蜜。

「働き蜂ってみんなメスなんですが、美味しいごはん(蜜)を見つけて、その情報を女子会(巣)で教えあってるんです。なんだかすごく羨ましい働き方だと思いませんか?」 そう楽しそうに話してくれたのは、首里で創業70年(1954年創業)になる新垣養蜂園の三代目、新垣 伝(あらかき つとお)さん。

今まで働き蜂と聞けば、“一日中飛び回り、せっせと働いている。”というのが私の中のイメージだった。そのため、伝さんの話を聞いたときには思わず目から鱗が落ちた気持ちだった。思わず、「それは羨ましい働き方ですね!」と返すと、「そうでしょう?」と笑顔で返してくれた。

左から新垣養蜂園三代目の新垣 伝(あらかき つとお)さんと奥さまの晴子(はるこ)さん
※以下「伝さん」「晴子さん」と称する。
首里金城町へ向かう坂道の途中、大アカギの石碑の向かいにお店がある。

そんな伝さんに新垣養蜂園の始まりを訪ねてみると、それは祖父の新垣 盛弘(あらかき もりひろ)さんが、佐賀県の養蜂家山口 雄三(やまぐち ゆうぞう)さんと出会ったことがきっかけだった。

※以下「盛弘さん」「雄三さん」と称する。

元々はある倉庫会社の計理士の仕事をしていた盛弘さんでしたが、雄三さんに「沖縄は1年中暖かく四季を通じて花が咲くので、蜂蜜が採れやすい。」と聞き、戦後の苦しい時代に、少しでも家計の足しになればと、養蜂をはじめたという。

続ける内に、どんどんと養蜂の魅力に取りつかれていったものの、今のように蜂蜜が主流ではなかったことから、苦しい時代が続いた。けれど、挫けずコツコツと続ける内に、健康食品ブームがおき、そこから少しずつ軌道にのっていったという。

新垣養蜂園 初代の新垣 盛弘さん
元気にミツバチが飛び回る、現在の新垣養蜂園の屋上
新垣養蜂園の店内。様々な種類の蜂蜜が並ぶ。
丁寧に蜂蜜の違いを教えてくれる伝さん

今でこそ新垣養蜂園の三代目として日々養蜂の仕事に取り組む伝さんですが、実は元々は教員を目指していたと言います。

伝さん 子どもの頃は養蜂家になろうとは思ってもいませんでした(笑)。手伝いで近づくと刺されるし、蜂蜜も家には必ずあるものでしたから、ありがたいものでもなかったんです。けれどある日、世界的にミツバチが減っていると、すごい大々的にマスコミに取り上げられているのを見て、ふと、ミツバチが減るとどうなるんだろう?と本を読んだら、ミツバチが受粉することで、僕らの食料自給を陰ながら支えてくれているのだと知り、そんな凄い仕事を僕は無視していたのか…とショックを受け、後を継ごうと決意しました。

それにこの仕事をしていても、ミツバチ教室や養蜂体験を通して、自分がやりたいと思っていた教育の仕事ができるんだと気づいてからは、自分のしたい事も家業も守れるしで、養蜂家になって良かったなと思ってます。

ミツバチの生態を通じて自然環境やSDGsについて学ぶことがでるミツバチ教室。
実際の巣も見学することができるミツバチ見学。

伝さん 例えば料理って、同じ料理を1日で10回作ろうと思えば作れるじゃないですか?でも養蜂は1年で1回しか経験できない。僕は養蜂をはじめて今年で13年目になるのですが、まだたったの13回しか経験できていないんです。それに養蜂って自然ありきの仕事なので、その時々の天気や温度にすごく影響を受けるんです。毎年違う状況になるって、すごく難しい事だけど、同時に自分の知らない発見がまだまだあると思うと、なんだかすごくワクワクするんです。それに、養蜂をしていると、“自然の中に僕は常にいるんだ。”と感じられるのも魅力ですね。

「首里王朝蜂蜜」。売り上げの一部はNPO法人首里まちづくり研究会の行う、首里のまちづくり(植花等)の活動に活かされている。

そんな伝さんが作る蜂蜜の中の一つ「首里王朝蜂蜜」は、首里の花々の蜜を集めた貴重な蜂蜜だ。口に入れると自然な甘さと花の香りが広がるが、後味はスッキリとしており、後を引く美味しさだ。こんがり焼いた食パンやヨーグルトはもちろん、紅茶や珈琲などの飲み物とも相性抜群だ。

伝さん ミツバチが、“一生懸命集めてくれた貴重な蜜”と思ってくれるのも嬉しいですが、彼女たちが楽しく働きながら集めた蜜を美味しく味わっていただけるのが一番嬉しいですね。



始終笑顔で分かりやすくお話を聞かせてくれた伝さん。「ミツバチを守ることは、僕たちの暮らしを守る事にも繋がるんです。」と話す姿に、笑顔でうなずく晴子さんとの仲の良い姿も印象的でした。

ここ首里の地で、今日も蜂蜜作りに邁進している伝さんと、それを支える晴子さん。祖父・父と繋いできた大事な家族の絆と確かな仕事が、より甘く、美味しい蜂蜜を作り上げているのかもしれない。新垣養蜂園さんの作る“ここにしかない蜂蜜”。ぜひそれを味わいに、足を運んで頂きたい。

首里石鹸 中里ゆきこ

【新垣養蜂園】
■DATA:〒903-0815 沖縄県那覇市首里金城町1-29
■営業時間:9:00~18:00
■お電話:098-884-0814
■定休日:日曜日
■駐車場:店舗入り口斜め前に3台有り
■公式サイト:https://arakaki-bee-farm.com/
※各種ワークショップ(ミツバチ教室、養蜂講座、ミツロウラップ作り、ミツロウキャンドル作り、ミツバチ見学)は、公式サイト又はお電話にてお問い合わせください。

取材後記

新垣養蜂園さんで教えて頂いた蜂蜜とトマトの組み合わせを自宅に帰ってから早速試してみました。酸味のあるトマトに甘い蜂蜜が絡み、すっごく美味しいです!!今までは砂糖をかけて食べていましたが、これからは蜂蜜一択になりそうです♪ぜひ皆様も試してみてください。

首里石鹸 公式YouTubeにて
「晴れ時々、首里」の動画も絶賛配信中です!

YouTubeでは、おなじみ弊社の甲斐ちゃんがミツロウ作りを体験もしておりますので、ぜひYoutubeショートも合わせてご視聴いただけますと嬉しいです♪