ここのところ何かと忙しく、失敗もたくさんあって、いつも心の余裕を探していた。
懐かしい再会もたくさんあり、今の自分を「大丈夫」と思わせてくれる人、もの、景色に、どれだけたくさん囲まれているのだろうと、気づかされる。
普段とは時間軸も変わり、行動範囲もぐっと広がり、
以前にも見たような、いや、初めて見るような、様々な景色を目に焼き付けながら、少しずつ力を繋いできた。
そんな中、訪れた、大石林山。
先日、やんばるで岩の躍動感に魅了されてから、どうしても行きたいと訴えていた場所だった。
万全とは言えない体調だったのに、歩き始めてすぐから、石灰岩が切り立った不思議な世界に吸い込まれていった。
自然と歩みが止まり、一人だけの空間になる。
長い年月をかけて、雨水により侵食された石灰岩は、海辺で魅了された海食崖(かいしょくがい)とはまた違った険しさを感じさせ、今の自分にしっくりくる気がした。
不思議と怖さはなく、あらゆる岩が、まるで生きているように見えて、いつの間にか足取りが軽くなり、疲れはどこかに消えていた。
少し足早に、先を歩いていた主人と母の背中に追いついたが、後ろからそっとその親子の時間を見守った。
切り株に石が乗せられている一角が、まるで宝石箱のように見えた。
すっかり生き返った気持ちになる。
帰路の途中で力強く咲いていた「火炎木(カエンボク)」は、まるで私の心に灯る元気を表しているようだった。
ライター
首里石鹸 白鳥恵子