駐車場に向かう並木を無意識に通り過ぎた時、目が覚めるような真紅の彩りの残像が残った。
「お母さん、さっきのところまで歩いてから、砂浜に向かってもいいですか?」

近づいてみると、やはり!彩りの正体は、デイゴの花だった。
沖縄県の県花で、ウチナーグチでは『ディーグ』という。
花の姿だけで沖縄の風土が感じられて大好きなのに、毎年、慌ただしいこの時期に咲き、じっくり楽しむ機会がなかなか得られないので、絶好のチャンスだった!

まだ真紅の花が咲き始めたところで、これから色づく無数の蕾を見ていると、期待で心が踊る、素敵な時間になった。
息子の高校入学に合わせて、3年ぶりに沖縄で過ごしている白鳥のお母さんは、私と同じようなテンションで、沖縄の自然を楽しんでくれている。
私が、長らくデイゴに見入っていると、
「ねぇ、あそこに、大きな実がなってるんだけど、何の実かしら」
とお母さん。
よく形を見てみると、楕円ではなく、なんだかボサボサしている?

「お母さん、あれはオオコウモリです!」
愛くるしい顔がまさにこっちを向いていた!

それからオオコウモリと見つめ合いながら、しばらくお母さんと談笑した。
お母さんの暮す長野の草食のコウモリはとても小さく、蝶と間違えてしまうらしい。
「あら〜、メジロちゃんね、可愛いわね」
ヤシ科の『ビロウ』(沖縄では『クバ』という)の花に、メジロが止まっていた。
その様子は、美しい色合いと形の集う作品のようだった。


すると、沖縄に移住してすぐに遊びに来た時の思い出を話してくれた。
近所の公園で、メジロのひなが地面にいるのに気づいて、まだ3歳だった息子と見守っていると、なんとか飛び立って近くの木に止まったという。
まだあどけない時代の息子と、巣立ちから間もないメジロのひなとの出会い。
私の記憶にもうっすら残っているその情景が、ノスタルジックに思い出された。
それからも、お母さんが手をかざすと、イソヒヨドリが近づいて来たり、お母さんと散歩に出かけると、普段よりも自然がぐっと近づいてくるような、不思議な感覚に包まれる。


3年ごととは言わず、秋の散歩も、冬の散歩も、一緒に楽しみたいなと思いながら、今日も一緒に歩いている。

ライター
首里石鹸 白鳥恵子